AV求人に求められる女性の資質

スカウト求人が主だった昭和のAV

AVであっても撮影現場はテレビ番組のそれと変わらない昭和のAV嬢たちは、どのようにしてAV女優の職に就いたのだろうか。
当時のAV制作現場のリアルを知るすべを私は持たないが、当時を知る人たちの話を聞くに、語尾こそ濁すにしろ、半ば騙すようにしてAVに出演させてしまうような状況が当時にはあったらしい。
そして、逆を返せばそのような「悪い誘い」にみすみす乗ってしまうような、半ば「現実の判断能力が低い」、相手を疑うことのない素直な女性がAVに出演していたのかもしれない。
現在でも、AV女優が自身の所属しているプロダクションを騙されて出演したとして訴える事案があったりする。
なぜこのようなことが今でも横行するのかといえば、やはりAVに対する需要が高いためだ。

ぽっちゃりに性的価値を見出したメディアの発明

巨乳や熟女、SM、ぽっちゃり。
そして痴女。
一部の限られた人の性嗜好であった、それらぽっちゃりなどのジャンルが一般的な性嗜好として広がったのは、やはりAVの影響が大きいとされる。
現在ではありえない、おっぱいが深夜帯で普通に見られた1990年前後、フードルとして多くの風俗嬢やAV女優がテレビの深夜番組や雑誌で活躍した時代がある。
これにはふたつの事情があった。
ひとつは、アダルトコンテンツは男性人気が高いこと。
もうひとつは、テレビや雑誌の制作費上の問題である。
自前でヌード女優をブッキングするのにはもちろんギャランティが発生するが、風俗嬢の場合は所属する風俗店が、AV嬢の場合はAVレーベルが「広告宣伝費」「販促費」として彼女たちのギャラ相当を支払うため、テレビや雑誌の制作費が安く仕上がるためだ。
風俗嬢やAV女優にとっても、テレビや雑誌に掲載されることで自己肯定され、プライドが保たれて満足できるので歓迎だったのだ。
こうしたテレビや雑誌は持て囃され、男性視聴者の目新しさや新しい刺激を求めて様々な性的嗜好がカテゴライズされ、細分化されていった。
ぽっちゃりなどのカテゴライズは発明であり、それを一般化させたのはテレビや雑誌の力だったのである。
自分からフードルになりたいと、高収入求人誌を買い求める女性が一般化したのも、またメディアの力だったのだろう。

性的動機を持つことと清楚の両立

かつてのAVでは、清楚な女優は決して男性を欲しがるような演技をしなかった。
男性を欲しがるような「痴女」を演じるのは、どこか容姿に劣るような、体型が極端に崩れていたり、明らかに永久歯の整列具合が劣っていたりするような女性が、のきなみ「痴女」を演じ、男性のそれを欲しい欲しいと騒ぎ立てるのだ。
積極的な理由で彼女たちが痴女を演じていたのではなく、「容姿が劣るから、痴女でもやらせないと商品力がない」という消極的な理由が垣間見える時代だ。
しかし現代では、外見的カテゴライズとプレイスタイルのカテゴライズが過剰に細分化されたことに伴い、「痴女」の場合であっても、その外見には必然性がある。
美人や若い女性はもちろん、10代のかわいい女性がデビュー作から卑猥な言葉を発し己の性器を刺激しながら、足で男性の性器を刺激する(いわゆる足コキ)を行うようなAV作品は、一般的である。
このように「痴女」であることは、単なる属性に過ぎないのだ。
清楚とも、美人とも両立する。
AV女優として求められる資質とは、まず「痴女」を演じるきることのできる女性といったところだろう。
容姿や体型が良かろうが悪かろうが、「痴女」を演じられないおとなしい女性は論外ということなのだ。
AV業界ですらそうなのだから、性風俗店に勤務しようとしている女性が、求人面接でアピールすべきことは「どれだけ自分に性的動機があるか」しかないのだ。
その性的動機、つまり「痴女」を演じられることこそ、求人からの視点では「やる気」という言葉で表すのであろうが、おそらくそこまで自分の性的動機に向き合っている女性にはなかなか出会えない。
しかし、初回、前回と書いてきたように、数ある風俗店の中でぽっちゃり風俗店が流行っているのは「痴女」を演じられるぽっちゃりした女性が一定数いることもまた事実なのである。
まずは「痴女」であること、それができて初めて、ぽっちゃりという特異性が活きてくるのだ。
それこそが稼ぐための一番の近道であるだろうに、それを求人面接でアピールしないなんてもったいない以外の何物でもない。
次回はぽっちゃり風俗嬢になる時、また実際に働く時に必要になる、コミュニケーション能力について書いていきたいと思う。